「では、行ってくるよ」
「ああ。夕方4時に、ディオゲネスクラブで落ち合おう」
「すまないホームズ。こんな時に急患だなんて」
「君のせいじゃないさ。それに、なんと言っても君は医者なんだ。僕のことは気にせず、職務を果たしたまえ」
「ありがとう。では、また夕方に」
ドアに向かったワトソンの背中に、思わず声をかけた。
「どうか、気をつけて」
言ってから、自分の言葉に自分自身が驚いた。
急患で彼が呼び出されるのは、いつものことではないか。私は何を危惧しているというのだ?
ワトソンも、思いもかけぬと言った様子で、目を見開いて私を見つめた。
「どうしたんだい? 往診は、いつものことじゃないか」
「ああ、そうなんだが……」
自分の行動に、論理的な説明がつけられない。
不快感に黙り込んだ私に、ワトソンは軽くため息をついて、微笑んだ。
「じゃあ、今日のお詫びに、夕飯は僕におごらせてくれたまえ。なに、心配ないよ。きっと、君よりも先にクラブに着いているさ」
そう言うと、彼は手にしたハットを、お道化た様子でひょいと持ち上げ、そのままドアの向こうに消えていった。
* * *
無闇に不安なフラグを立ててみました。笑
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