嘘つき(Soundwave/TC)






「サウンドウェーブ、俺たち、ちょっと距離を置かないか」

 また始まったか。
 サウンドウェーブは、作業の手を止めて椅子ごと振り返ると、後ろに立っていた水色のジェットを見上げた。
 自己評価がとても低いこの戦闘機は、ときどきこの病にかかる。情報参謀の恋人として平凡な自分はそぐわない、という漠然とした理由で、サウンドウェーブから離れようとするのだ。
 馬鹿げたことだ、と思う。

「ナゼ」
「なぜって……」
「俺ハ、オ前ノ存在ソノモノガ大切ナノダト、何度言エバ解ル。能力ハ関係ナイ」
「でも……」

 言いかけて、サンダークラッカーは、顔を横に向けた。何を言おうか、どう言おうか、おそらく必死になって考えているのだろう。
 こんなときのサンダークラッカーは、頑固だ。普段の日和見の態度が嘘のように、なんとしてでも、自分の意見を通そうとする。一度として成功したためしはないのだが、彼は学ばない。今回は、何を言うのだろうか。サウンドウェーブは、バイザーの下でアイセンサーを細めた。

「……あ、ああ! そうだ、他に好きなヤツができたんだよ!」
 ああ、この理由は最悪だ。
 嘘でも言って良いことと悪いことがある、と、この愚かな戦闘機に教えてやらなければならない。
 サウンドウェーブは、立ち上がりサンダークラッカーに歩み寄った。
 自分の放った言葉が平穏なものではなかったということは、さすがにサンダークラッカーにも自覚があったらしい。サウンドウェーブは、顔をひきつらせて後ずさりしかけた水色の機体を捕まえて抱きしめ、聴覚センサーに囁きかけた。

「嘘デモ、ソンナコトハ言ワナイコトダ」

 慄く背から腕を外し、今度は両手で彼の白い顔を包み込んで覗き込んだ。サンダークラッカーの赤いオプティクスが、間近で茫然と揺れている。

「……何ヲスルカ解ラナイ」

 サウンドウェーブは、そう言うと、マスクを開放した。








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