【視線】
ここ数百ステラサイクルほど、俺はずっと彼に見られている。ブリーフィング中には当然のこと、オペレーション中も、基地内での日常でも、ふと気がつくと、彼の白い顔が必ず俺に向いている。顔を上げれば、必ず互いの視線が絡む。「ナゼ、イツモ俺ヲ見テイル?」「アンタが、いつも俺を見ているんだよ」





Seesaw






【好きな所】
サウンドウェーブの悪評を聞いても、俺は特にアイツを擁護はしない。嫌ならアイツ自身が対処するだろうし、そうしないということは、アイツが気にしていないということだからだ。アイツは強い。周りの評価など気にせず己の道を進む。俺は、その強さが好きだ。だからこそ、俺はアイツの言葉を信じない。





【嫌いな所】
サンダークラッカーは、よく笑う。その笑顔の意味が一つではないことを、俺はよく知っている。彼は、同型機達の自慢話を、にこやかに聞いている。彼は、カセットロン達と、楽しげに笑いあう。飲み会での下世話な噂話にも、彼は軽く微笑んでつきあっている。そして彼は、俺の言葉に、曖昧に笑って頷く。





【命令】
大切には思ってる。でも、俺はアイツを信じてはいない。「何ヲシテイタ」「何ヲ考エテイル」「勝手ナ行動ヲ取ルナ」「余計ナ事ハ考エルナ」「君ハ、タダ俺ノ言ウ通リニシテイレバ良イ」「コレハ、君ノタメダ」「……ナゼ、何モ言ワナイ?」大切には思われてる。でも、俺はアイツに信じられてはいない。





【喧嘩】
彼は従順だ。俺の言葉に、ただ大人しく頷く。いつでも。「ナゼ、何モ言ワナイ?」そう訊くと、彼は不思議そうに俺を見た。「アンタ、俺の話を聞く気なんてあんの?」「勿論ダ」言下に答えると、彼は、ふと横を向いた。嘘つき、と、その唇が動いた。俺は、彼を怒らせたことに、まだ気づいていなかった。





【逆転】
アンタ、俺を何だと思ってたんだ。その辺のガラクタと同じだと思われてたほうが、まだ良かった。俺の話を聞く気なんて、最初からありもしないくせに。ああ言や喜ぶとでも思ったのかよ。アンタが見てたのは、そんな俺だったのかよ。馬鹿みたいな話だ。アンタが見てた、俺じゃない俺を許せないなんて。





【ジェットロン】
彼が俺を見ない。あれほど俺を見つめ続けてきたというのに。「サンダークラッカー!」人けのない通路で、彼を捕らえ問い詰めた。「ナゼ、俺ヲ避ケル」横を向いていた彼が、俺を睨みつけた。見たこともない激しい目で。「俺はジェットロンだ。アンタだけを見て、アンタの為だけに生きることはできない」





【告白 / Side T 】
結局あれからも、俺達は一緒にいる。サウンドウェーブには、俺の言いたかったことは、きっと本当には伝わっていない。俺は、アイツがたまに、俺の頭を覗こうかどうしようか迷っているのが判る。アイツの視線が、痛いくらいに突き刺さるのを感じる。でも、俺は何も言わない。そうしてアイツの傍にいる。





【告白 / Side S】
結局、サンダークラッカーは俺の所に戻ってきた。相変わらず、彼は曖昧に笑う。俺には彼が解らない。ブレインスキャンすれば判るのだろうか。仮にそれで彼を把握したとして。でもそれで? 彼が俺を見る。あの目が感情を迸らせるのを、俺はあの時初めて見た。彼は何も言わない。そうして俺の傍にいる。








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